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秋田地方裁判所 昭和36年(む)155号

右申立人にかかる過料の裁判に対する準抗告申立事件につき当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件申立を棄却する。

理由

本件準抗告の申立の理由は別紙(一)のとおりである。

申立理由第一点中憲法第三一条違反を主張する部分、同第三点に対する判断

所論は刑訴法第一六〇条、第二二八条の規定は憲法第三一条の適法手続の保障規定に違反し、仮に然らずとするも同法条の精神に反し無効であるから、右刑訴法に基く本件過料の裁判も亦違憲であるというのである。

しかしながら過料の制裁は刑罰ではなく、いわゆる秩序罰に属するもので、憲法第三一条の適法手続の保障中にはかかる秩序罰は含まれないと解すべきであるから、これと異る見解に立つ所論は既にこの点で失当たるを免れない。もつとも所論のごとく「証言拒否権の範囲につき法律の専門家においてさえ判断に苦しむ問題を包蔵している」ことも一概に否定し去ることはできないのであるが、さればこそ法は過料の裁判に対し不服申立の途(本件準抗告の申立が正に之である)を設け、事後的にせよ一応の保障規定をおいているのである。以上の次第で刑訴法第一六〇条、第二二八条は毫も前記憲法の法条又はその精神に反しないから所論は採用の限りではない。

申立理由第五点(憲法第三七条第二、三項、第三八条第一項、刑訴法第二二六条、第二二八条第二項違反)に対する判断

所論は要するに本件過料の裁判は、その基礎となつた証人尋問手続が(イ)申立人のごとく当該被告事件の共犯者と目される者に刑訴法第二二六条を適用した点、(ロ)証人尋問につき被告人又は弁護人に対し何ら通知がなく、又その立会も許さずに施行した点で憲法第三八条第一項、第三七条第二、三項、刑訴法第二二六条、第二二八条第二項に違反するから、したがつて右裁判も亦違憲、違法であるというのである。

しかしながら(イ)刑訴法第二二六条の証人尋問の請求は、犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が同法第二二三条第一項の規定による取調に対して出頭又は供述を拒んだ場合に認められること法の明定するところであつて、したがつてその者が同法第一九八条の規定により当該事件の被疑者として取調をうけた者でない限り、単に当該被告(疑)事件の共犯者と目される立場にある者である事を以つて前記法条の証人たるの適格を否定することはできないというべきである(所論は、そうすると憲法第三八条第一項の保障する供述拒否権を侵す結果となるというのであるが、証人は自己もしくは親族等の刑事訴追又は有罪判決に至るおそれのある尋問事項につき刑訴法第一四六条、第一四七条で証言を拒否することができるから所論のような心配はないわけである。大阪高裁昭和二六年(う)第一一六三号同年一二月二四日判決、高裁刑集四巻一二号一六七四頁参照)(もつとも共犯者的立場にあり刑事訴追をうけるおそれがあることを理由に供述を拒否した者を前記法条による証人として当該被告人の犯罪事実につき尋問の請求をしてみても、結局自己負罪を理由に証言を拒否することが予想されるのであるが、だからといつてかかる証人尋問の請求自体が許されないという理由とはならない)ところ、記録によるも申立人が被告人小川俊三外四名に対する住居侵入等被告事件につき被疑者として取調をうけたことが窺われないから本件証人尋問手続は適法である。所論は独自の見解にすぎず失当である。

次に(ロ)刑訴法第二二六条の規定は同法第一九七条第一項に基き規定された検察官の強制捜査処分請求に関する法律規定であつて受訴裁判所の訴訟手続に関する規定ではなく、したがつて右証人尋問につき原則として被告人、弁護人の立会は許されておらないのであつて(同法第二二八条第二項)、右規定は受訴裁判所の訴訟手続に関する憲法第三七条第二、三項の保障規定とは本質的に関係がないというべく(最高裁昭和二五年(あ)第七九七号同二七年六月一八日大法廷判決、刑集六巻六号八〇〇頁参照)、したがつて又右証人尋問に際し、被告人又は弁護人に尋問の日時および場所を通知する必要もないというべきである(最高裁昭和二六年(あ)第一八九五号同二八年三月一八日第二小法廷判決、刑集七巻三号五六八頁参照)からこの点についての所論も亦失当を免れない。

以上の次第で本件過料の裁判の基礎となつた証人尋問の手続には所論のごとき違憲、違法は毫も存しない。

申立理由第一点中刑訴法第四四条第一項違反を主張する部分に対する判断

本件過料の裁判が上訴を許す裁判であるから理由を附しなければならないこと、原裁判の内容は別紙(二)のとおりであつて、文面上は具体的に如何なる事項についての証言拒否を以つて過料の制裁の対象としたか必ずしも明確ではないこと所論のとおりである。しかしながら証言の拒否を理由とする過料の裁判は、証人が証言を拒否した事実があり、当該裁判官が右証言の拒否に正当な理由がないと認めた場合、それを理由として過料の制裁を科することができるのであつて、具体的に如何なる事項について証言を拒否したかを理由中に明示する必要はなく、(したがつて具体的明示がない以上証言拒否の全部を一応過料の制裁の対象としたものと考えられる)、具体的明示がないことを以つて裁判に理由を附しないということはできないから所論は失当である。

申立理由第二点(刑訴規則第一二二条違反)に対する判断

しかしながら刑訴規則第一二二条第二項にいう証言命令は、証言を拒む者がこれを拒む事由を示さないときに要請されること法文上明らかであるところ、申立人に対する証人尋問調書添付の速記録原本、(以下単に証人尋問調書という)によれば、申立人は証言を拒む事由を、その都度自己が訴追をうけるおそれがあるからである旨開示していることが認められるので、原裁判書に証言を命じた旨の記載なく、又事実上も証言命令がなされていないから本件過料の裁判が前記刑訴規則の条項に違反する旨の所論は失当である。(同所論は通常人にとつて証言拒否の正当理由の限界が明らかでないから、裁判官から強く証言命令があれば、特に注意を集中して証言をする最後的決断をなす機会が与えられたかも知れないという趣旨の主張をしているが、前記証人尋問調書を仔細に検討するもかかる結果を期待する余地は全く窺われない。)

申立理由第四点(事実誤認、法令違反)に対する判断

所論は要するに申立人が証言を拒否したのは正に憲法第三八条第一項、刑訴法第一四六条の権利を行使しうる場合に当り、同法第一六〇条の正当な理由がある場合に該当するものであるというので以下においてこの点を検討する。

証人が事件についての証言を、自己がその事件で(他事件の場合は一応別として)刑事訴追を受け又は有罪判決を受ける虞のあることを理由にこれを拒絶し得る合理的な限度の問題は抽象的な定義如何ではなく、問題となつている事件の性質、内容と、被尋問者の事件における立場の両面から決定さるべき具体的な問題である。特に被尋問者がその事件の共犯者的立場におかれている場合には捜査官が打ち出している共犯の態様如何を見のがすことはできない。したがつて同一事項の尋問に対しても、被尋問者がその事件の共犯者的立場にあるか否か(例えば単なる行きずりの目撃者)、検察官がその事件の実行行為担当者乃至現場における加担者のみの訴追をしているか否か(例えば共謀共同正犯者の訴追)、事件自体がそもそも計画的な事件であるのかどうか(したがつて将来共謀共同正犯の訴追という問題が生じ得るかどうか)により当該被尋問者が之に対する証言を正当に拒否し得るかどうかにつき差異の生じることは当然であるといわねばならない。要するにこの問題は検察官がその事件について、訴因、罪名を以つて張つた或は将来張るかも知れない訴追の網に被尋問者自身がひつかかる虞れがある証言かどうかという問題であるといえよう。

そこで先づ問題となつている被告人小川俊三外四名にかかる住居侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反の事件内容をみると、別紙(三)の起訴状記載の公訴事実に明らかなごとく第(一)被告人小川俊三等四名と、現場に同行した組合員数十名との共謀による知事公舎よりの不退去、第(二)被告人小川俊三等三名共謀による多衆の威力を示した脅迫、暴行、第(三)被告人小川俊三等五名と、現場に同行した組合員四、五十名との共謀による住居侵入、第(四)被告人佐藤陞等二名共謀による建造物損壊、第(五)被告人小林俊太郎の多衆の威力を示した暴行の各行為であつて、第(二)は第(一)の、第(四)、第(五)は第(三)の各渦中において敢行されたというのである。而して申立人が右事件につき共犯者的立場におかれていることは別紙(四)の申立人に対する本件尋問事項をみれば明白である。(特に尋問事項三の6乃至9、同じく四の4乃至9は証言如何によつては申立人自身前記被告人小川俊三外四名にかかる第(一)の共謀不退去罪、第(三)の共謀住居侵入罪の犯罪構成要件そのものを充足する事実であるといえる。)

本件証言拒否の正当理由の有無について

(A)  総説(尋問事項の検討)

先づ当裁判所は前記尋問事項一、(秋田県政共斗会議結成の経緯、構成、役員及びこれ等との関連事項)二、(右共斗会議が知事に対し「昭和三六年度秋田県予算に関する要求書」を提出した経緯、その内容、県当局との交渉経緯乃至状況、共斗会議所属組合員の動員計画及びこれらとの関連事項)、追加尋問事項一、(右共斗会議の意思決定機関、方法)、二、(交渉計画者と計画内容)のすべてにつき申立人は証言を拒否する正当な理由がないものと認める。

所論は、(イ)尋問事項一、は本件公訴事実が県政共斗会議の組合員による共犯であり、しかもその共犯の範囲が明確でない以上、申立人が右共斗会議の役員又はその構成組合員の役員であるとすれば、右尋問事項はすべて申立人の共謀推認の前提をなすもので、正に構成要件事実を推測するに至る密接な関連事項であり、(ロ)尋問事項二、は本件公訴事実がこの要求書の回答に対する不備から生起した事実と考えられるので、これも同様構成要件事実を推測するに至る密接な関連事項であるから証言拒否は正当であるというのである。しかしながら前記公訴事実に明らかなごとく検察官は右事件で訴追しているのは実行行為加担者のみであつて、所論で心配している共謀共同正犯者でないばかりでなく、そもそも右事件は何れも事前の計画(共謀)に基くものではなく、いわば合法的な集団行動から転じた又はその渦中で生じた犯罪であるから、将来共謀共同正犯者の訴追という問題が生じ得ないのであつて、このことは被尋問者である申立人自身「組織の責任者」として熟知している筈のことである。(この点で、所論の援用する福岡地方裁判所の判例は地方公務員法第三七条の争議行為等の禁止条項違反の事件に関するもので之と軌を一にすることはできない。)したがつて右の事項はすべて右事件の共謀推認の前提をなすものということはできない。(ロ)同様に尋問事項二、も又右事件の構成要件事実を推認するに至る密接な関連事項ということはできないから、この点についての所論は採用できない。

次に当裁判所は尋問事項三、(昭和三六年二月一一日知事公舎に行つた状況)、四、(同月一二日知事公舎に行つた状況)は、その全部につき申立人は刑事訴訟法第一四六条に基き之に対する証言を拒否する正当な理由があるものと認める。

成程申立人が事件当日知事公舎に行つたかどうかということは、それだけでは特別の場合(例えば刑法第七七条第一項第三号、第一〇六条第三号等が問題となる場合)を除けば何ら犯罪を構成する虞のある事実ではない。しかしそのことと、その事実が被尋問者にとつて自己負罪の虞があるといえるかどうかということとは別である。前者は事実上の判断にすぎないが、後者は右尋問の意味、之に対し陳述をしなければならないその証言の意味の問題である。尋問事項に明らかな通り、「当日知事公舎に行つたかどうか」ということはその後の時間的経過を追つて「公舎に入つたかどうか」「退去の要求をうけたか、退去したか、何故退去しなかつたか、警官が来たか、警官に押し出されたか」という順序で結局は被尋問者の自己負罪の事実にまで結びつく法的(この点で後述のごとき単なる道義的なそれと異る)連鎖の重要な端緒となつているのである。換言すれば、右尋問(事項)はかかる連鎖の一環としてはじめてその本来の意味付けができるといえる。(縦の連鎖)更に又たとえ尋問(事項)が第三者の行動に関する事実であつても、それが現場(知事公舎)における目撃状況である限り、前記公訴事実(第一)、(第三)が何れも現場にいた組合員数十名との共謀を訴因としている以上、必然的に被尋問者の自己負罪の事実を推認せしめる事項であることに変りはないのであつて(横の連鎖)、憲法第三八条第一項、刑訴法第一四六条の保障規定は正にこれらの尋問事項のすべてに適用されるといわねばならない。しかも記録によれば、被告人小川俊三外四名に対する起訴前の被疑事実が、二月一一日の知事公舎よりの不退去、同月一二日の同公舎への侵入の各所為を、前者は被告人小川俊三外三名による共謀、後者は同被告人外四名の共謀とされていたのを、起訴に際し前記のごとく何れも現場に同行した組合員数十名との共謀をうたい、検察官においていわば訴追の網をひろげてきたともいえる本件で、右証言の拒否を許容しないときは前記保障条項を死文化するとのそしりを免れないであろう。(もつともこの場合、しからば尋問事項二の4、追加尋問事項二の組合員動員計画についても、結局問題となつた集団行動の発端をなすものだから縦の連鎖の一環として証言の拒否は正当ではないかとの疑問も生じるかも知れないが、前記のごとく本事件が事前の計画に基くものではないから、右動員計画に参加したことは、いわば道義的な責任以上のものではなく、右にのべたごとき法的連鎖の一環をなすものとはいえないのである。)したがつて、所論は右の限度で正当である。

(B)  各説(申立人の場合)

申立人に対する証人尋問調書によれば、申立人が尋問事項一、二、のうち秋田県政共斗会議の議長、副議長、幹事の氏名、予算に関する要求書を秋田県に提出後その交渉のため右共斗会議に属する組合員を動員した計画、経緯についての証言を、自己が刑事訴追をうけるおそれがあることを理由に拒否したことが認められ、右証言の拒否は正当な理由がないこと前説示のとおりであるから、原裁判は右の限度において正当である。

よつて原裁判の取消を求める本件準抗告の申立は結局理由がないからこれを棄却することとし、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第一項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 渡辺才源 石橋浩二 藤巻昇)

(別紙(一))申立の理由(補充申立書の記載を含む)(省略)

(別紙(二))

決  定

住所 秋田市柳田字柳田三一

高校教員 佐々木太一

当三十年

主文

右の者を過料三千円に処する。

理由

右の者は被告人小川俊三外四名の住居侵入等被告事件について、昭和三十六年五月九日当裁判所における当裁判官の刑事訴訟法第二百二十六条、第二百二十八条による証人尋問に際し、宣誓を了し、かつ正当な証言拒絶権の行使および故なき拒絶に対する制裁につき告知を受けたにかかわらず、秋田県政共闘会議の役員名その他証言を拒絶する正当な理由が認められない事項の尋問に対し、その証言を拒絶したことが一件記録に徴し認められる。

よつて当裁判官は刑事訴訟法第二百二十八条第一項、第百六十条第一項を適用して主文のとおり決定する。

昭和三十六年五月十日

秋田地方裁判所

裁判官 杉島広利

(別紙(三))

公訴事実

被告人小川俊三は、秋田県政共闘会議に属する秋田県職員組合の中央執行副委員長、被告人佐藤陞は、同組合の中央執行委員、被告人小林俊太郎は、同組合秋田支部の委員長、被告人高橋茂は、同共闘会議に属する全日本自由労働組合秋田県支部の執行委員長、被告人橋村昭一は、同組合秋田分会の副委員長であるが

第一、被告人小川俊三、同小林俊太郎、同高橋茂及び同橋村昭一は前記県政共闘会議に属する組合員数十名と共に、同会議が昭和三十六年一月二十日付で秋田県知事小畑勇二郎に提出してある「昭和三十六年度秋田県予算に関する要求書」の回答を求める為、同年二月十一日午前九時三十分頃、秋田市西根小屋町中丁十三番地所在の秋田県知事公舎において、昭和三十六年度当初予算査定中の同知事に対し「二月十三日に右要求書に対する回答をしてもらいたい」旨申入れたところ、これに対し同知事が同月十五日まで回答を待つてもらいたい旨答えた為、あくまで右要求を貫徹すべく同公舎の廊下を占拠して労働歌を高唱し、床板を踏み鳴らす等の喧騒を極めていた前記組合員数十名と呼応して数次に亘り、交渉名目で前同様の申し入れをして県当局側の予算査定業務を殆んど進行できない状態に至らしめた為、同知事から同日午後八時頃、同公舎において、交渉は打切るから全員速かに公舎外に退去せられたい旨退去要求を受け、次いで同日午後九時四十分頃、再び口頭による退去要求を受けると同時に、秋田県総務部秘書課長栗山拾太郎から、同課長名義の退去要求書を右共闘会議議長内藤良平を通じて手交され、更に午後九時五十分頃、同県管理課守衛長武藤潔が同公舎廊下の壁に貼付した前記秘書課長名義の二十分以内に退去せられたい旨を記載した西洋紙三枚大の退去要求書により退去要求を受け、最後に午後十時五分頃、同県総務部次長大黒屋栄一から口頭で十分以内に必らず退去して呉れ、退去しなければ警察官を呼ぶとの厳重な退去要求を受け、右要求を知悉したにも拘らず、これに応ぜず、被告人等四名は前記組合員と共謀の上、同日午後十一時四十五分頃警官隊の実力行使による排除まで不法に同公舎から退去しなかつた。

第二、被告人小川俊三、同高橋茂及び同橋村昭一は、同月十一日午後九時三十分頃、前記知事公舎廊下において、秋田県産業労働部職業安定課長塩田晋が同僚二十名位と共に予算査定事務の為、同公舎第一応接室に入ろうとしたところ、これに対し、前記組合員四十名位と共に同課長等の入室を実力を以つて阻止したが、その際同課長を認めるや、共謀の上、直ちに前記組合員のうち二十名位と共に同課長を取り囲み「こいつが一番悪い奴だからやつてしまえ」「文句があるような大きな顔をしている、ただでおくもんか」「暴力とはどんなものか見せてやろうか」「この野郎やつてしまえ」等と怒鳴り、あるいは肩、上膊部、肘等で同課長の胸、腹等を押したり小突いたり等し、以つて多衆の威力を示して同課長の身体に危害を加えるべきことを告知して脅迫するとともに暴行を加えた。

第三、被告人小川俊三、同佐藤陞、同小林俊太郎、同高橋茂及び同橋村昭一の五名は、同月十二日午前九時三十分頃、前記知事公舎玄関において、前記組合員四、五十名と共に、前記要求を貫徹すべく同知事に面会を要求したが、前記栗山拾太郎、武藤潔等が知事は予算査定で忙しくて面会できないから公舎に入らないで帰つてもらいたい旨申し向けたにも拘らず、前記組合員と共謀の上、強いて右両名外約二十名の県当局側職員の制止を排除して、同公舎内に不法に侵入した。

第四、被告人佐藤陞、同小林俊太郎は、同日午前九時三十分頃、前記知事公舎玄関において、前記の如く同公舎内に不法に侵入するに際し共謀の上、同玄関と同廊下との境に取付けてある同玄関南側第二扉に両手をかけて強く外部に引つぱる等して該扉の差金部分を折り曲げ、且つ蝶番を該扉から分離せしめ、以つて他人の建造物を損壊した。

第五、被告人小林俊太郎は、同時刻頃、前記知事公舎玄関において前記組合員中の約二十名と共に、同公舎内に不法に侵入するに際し、同県秘書係長後藤孝一が被告人等の侵入行為を阻止しようとしたことに憤慨し「貴様なに者だ」等と怒号しながら多衆の威力を示し、同人の胸倉をつかみ、強く引張つて同人の着用していたオープンシヤツの襟元を引裂き、以つて暴行を加えた

ものである。

罪名並罰条

第一の事実 住居侵入  刑法第百三十条後段

第二の事実 暴力行為等処罰に関する法律違反  同法第一条第一項

第三の事実 住居侵入  刑法第百三十条前段

第四の事実 建造物損壊  刑法第二百六十条前段

第五の事実 暴力行為等処罰に関する法律違反  同法第一条第一項

(別紙(四))

尋問事項

一、秋田県政共闘会議は如何なるものか

1 結成の経緯

2 構成

3 役員

二、同県政共闘会議は知事に対し「昭和三十六年度秋田県予算に関する要求書」なるものを提出したか

1 提出の経緯

2 同要求書の内容

3 同要求書についての県側と交渉した経緯その状況

4 右交渉の為に県政共闘会議に属する組合員の動員計画を樹てたかその動員数、場所、日数

三、昭和三十六年二月十一日知事公舎に行つたか

1 その経緯

2 動員数

3 知事との交渉状況

4 公舎に入つた組合員達の動静

5 知事その他から交渉打切り及び退去要求を申し渡されたか

6 退去しなかつたか、その事情

7 塩田職安課長が廊下で吊し上げられていたか

8 警官隊に押出されたか、その事情

9 警官隊に押出される時の第二玄関扉の状況

四、二月十二日知事公舎に行つたか

1 二月十一日以前からの予定であつたか、二月十一日以後急遽予定されたものであつたか

2 行くことになつた事情

3 動員数

4 玄関で県側職員と押合をしたか

5 扉を開けたか

6 開けたときの扉の状況

7 その後廊下の中に入つたか

8 廊下の中に入つてからの行動はどうか

9 警官隊に押し出されたか

五、以上の事実について

1 証人の関与し、又は知つた範囲

2 証人とともに行つた者の氏名及その者の行動について

六、その他右各項に関連する事項

同追加分

一、県政共闘会議の意思決定機関及び意思決定の方法如何。

二、本年二月十一、十二の両日知事公舎において知事と交渉した計画は何時誰が立てたのか。

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